「マーケティングはアート」を地で行く話

先日、お客さんの女性経営者と話していてなるほどね～と唸った話です。
そのお客さん（Ｍさん）、数日前に生まれて初めてラジオショッピングでものを買ったと言うのです。

ご主人と車の遠乗りをした時のこと、ＡＭのラジオから経営者のインタビューらしきものが聞こえてきた。
この経営者、肌荒れに悩む女性たちのための化粧品を大学の研究者などと連携しながら開発して商品化に至った。ところが日本では殆ど相手にされず門前払いで、大きな借金を抱えて在庫の山を前に途方に暮れる日々、追い打ちをかけるように第一子が誕生し、いよいよ経済的に行き詰まった。窮余の一策として米国に活路を求めて、サンプルを方々でばら撒いた。
それがたまたま俳優の肌荒れ対策の商品を探していたハリウッドの高名な特殊メイクの専門家の目に止まり、一機に５００個の注文が入り、それをきっかけにして大成功に至った。

「この化粧品が本日は特別価格で○○円」、気づいたときにはＭさん、電話をかけて２本注文していた。その時、受付の電話から、「ところで、どのような肌荒れにお悩みですか？」と聞かれ、Ｍさん、「いえ、特に悩んでいるわけではありません」・・・。
その時、Ｍさん、はたと気づいた。あれ？私、肌荒れでもないのに何で化粧品買っているんだろう？インタビュー番組だと思ってたけど、ラジオショッピングだったんだ！

ちゃん、ちゃん♪って感じですけど、素晴らしい電光石火の早業マーケティング。
夫婦そろってラジオの話が終わったところで、この化粧品絶対買うべきだって盛り上がったそうです（笑）。

本人の買ってしまって「してやられた感」はさておいて、この話にはマーケティングの本質的な学べる要素が詰まっていると思います。
実は、化粧品のスペックはラジオで若干の説明はあったらしいのですが、殆ど聞き取れなかったそうです。なぜ、強く欲しいと思わせたのか？
それはエピソードでの苦労話、ハリウッドの特殊メイクが認めた肌荒れ用化粧品、つまり化粧品という商品をめぐる背景を語られることで強い感動を産んだのです。

もし、ラジオからひたすら化粧品の成分や効能を聞かされていたら、Ｍさんは全く反応しなかったでしょう。
商品そのものをプッシュしまくるのではなく、その背景の物語の見せ方、語り方で、人は感動し、購入を決める。まさにこれは素晴らしいシナリオが織りなすラジオ劇だったのですね。「マーケティングはアートだ」を地で行くようなお話でした。
こういう風に電光石火で自分が引っ掛かった実例の優れた構造だけをパクって、自分のマーケティングのシナリオを考えてみると良いと思いますね。高い化粧品代も良い授業料になったのでは？（笑）

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乗山徹

代表取締役 ： ファーストコンサルティング株式会社

北海道釧路市の中小企業診断士＆ＩＴコーディネーター。エクスマ手法でお客さん企業の売上アップを日々指導。沖縄好きで三線唄者「シーサー君」としてピン芸人もやっています。「シーサー君ブログ」で手書き絵ブログを一日一絵一文を更新中！

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