語り部が必要なのです

2015/10/17

昨日のブログで「ダイヤの村に住む者はダイヤの価値に気付かない」と書いたら、コメントが結構多かったです。
自分のことは自分で見えない、ところが他人のことは良い所も悪い所もはっきり見える。それと同じことなのでしょう。だから他地域から来た人、いわゆる「ソヨ者」が街づくりのキーマンになることがとても多いのだと思うのです。

摩周湖、屈斜路湖、アトサヌプリ（硫黄山）や原生林と極めて原始的な環境と景観、強烈な硫黄泉の温泉がいくらでも噴き出している、どこにも無い極めて特異な観光資源。これがダイヤモンドの原石です。
過去にこれらの原石を磨いてきたというよりは、全国どこにである団体旅行向けの宿泊施設で、判を押したようにどこでも同じ宴会場とサービス。飽きられて当然です。
「摩周湖綺麗でしょ、世界一の透明度を誇る神秘の湖です」なんて言われても、原石だけ提供して、「あとは魅力をお客さんの方でどうとでも発見して下さい。」と言っているのと同じようなものです。絵ハガキと同じじゃん！一度見たらもういらないよ、ってなるでしょ。

原石の魅力を引き出すには加工して磨かなきゃ輝かない。そこに人の手と創造力、魅力を引き出して伝える何かが必要。その一手段が今回出会ったアーティステッィクな造形物の数々だったり、独特の空気感を提供するカフェだったりなんだと思います。自然や土地の持つ原石の魅力と人の手による創造力、造形物、文化などが一体となってこの土地の魅力を分かり易く伝えることが出来るのではないのか。

先週、広島に出張した折り、空き時間を利用して平和記念資料館に行ってみました。実は思っていたほど心に入って来ませんでした。修学旅行生でごった返していてゆっくり回れなかったことが一因かもしれません。
僕が何と比較しているかと言うと、以前行った沖縄の沖縄県平和祈念資料館、ひめゆり平和祈念資料館との違いなのです。どちらも戦争の悲惨さを現代人に訴える施設で、前者は原爆の悲惨さ、後者は太平洋戦争時の日本で唯一地上戦が行われどちらとも大量の日本人が亡くなったのは共通している。
この違いは恐らく「語り部」の存在の違いなのです。広島の方が時間が遅かったのもあり、語り部なしで廻りました。沖縄の方は観光タクシーの運転手さんの解説も丁寧で素晴らしかったし、両施設とも戦争の実際の体験者が語ってくれた。云わば人が介在して中味を分かり易く伝える「語り部」の有無、その違いなのです。
戦争の惨さを伝える平和祈念施設を観光というくくりで語るのは不埒と叱られるかもしれませんが、マーケティングの本質的なことを伝える上でのこととしてご容赦下さい。

この話をさらに転用すると、いち観光だけでなく、全ての商品にその原石の魅力を説明する「語り部」が必要なのだと思うのです。
自分を振り返ってみても、本当の原石を引き立て説明する「語り部」をちゃんとしているのか否か、考えてみたいと思います。あなたも、ね。