東京原子核クラブ
2016/04/29
くしろ演劇みたい会、今回は俳優座で「東京原子核クラブ」でした。
舞台は昭和7年、東京本郷の下宿屋を舞台に後のノーベル物理学賞受賞者と
なる朝永振一郎氏をモデルとした主人公友田の登場から始まる。
京都大学を出て東京の理化学研究所に勤めた友田振一郎は物理学の研究に没頭
する毎日を送る。
下宿屋には理化学研究所の同僚、東大野球部のニセ学生、左翼演劇の劇団員、
踊り子、博打うちのピアノ弾き、下宿屋の爺さんと娘など不思議で個性的な連中
が集まり、日々色々な問題を起こしながらも人生をそれぞれ謳歌していた。
しかし日増しに戦争の足音が高くなり太平洋戦争が勃発。下宿屋からは一人、
二人と住人が消えていった。
そうした中、理化学研究所は陸軍から原子爆弾の開発を依頼される。
理化学研究所では物理学に関する技術は当時世界でも最先端を自負していたが
原爆の開発を実際進めるには莫大な費用がかかる。
結局、日本では原爆は作られず、アメリカの作った爆弾が広島、長崎に投下され
敗戦を迎えた。
友田たち理化学研究所の面々は原爆開発のために戦争には行かずに済んだ。
友田や同僚の小森が原爆が広島・長崎に投下された事を知った時、「本当に思って
はいけない事だが、ついにやったという一種の爽快感を感じた」と述懐する。
それは研究者の性(さが)であるとも。
そして舞台はラストシーン。敗戦後の8月、空襲で母屋は焼けたがかろうじて残った
下宿屋に生きてる連中が戻ってきたところでフィナーレ。
前半はコミカルな展開の中で活き活きと登場人物が個性を発揮しながら生きている様
が、一方後半は戦争が進み各自がその渦の中に急激に巻き込まれていく様が一気に
展開される。
演劇は時代を切り取り、その中で生きた人間の生き様を切り取って見せてくれます。
原子爆弾が日本でも開発が進められていたという事実はあまり語られていないように
思います。
今回の不幸な震災と原発事故の後だから感じるのかもしれないんですが、
日々、喜怒哀楽を持って楽しい事、悲しい事、苦しい事がありながらも坦々と過ごす日常。
しかし、それは戦争や災害のような個々人ではどうしようもない大きな力にによって幸せな
日常は破壊され、その渦に一気に飲み込まれていく。
(舞台では平常時には坦々と日々のエピソードを展開させ、戦時の非常時には変化のテ
ンポを一気にあげて、その違いを対比させて伝えていました。)
それはいつ起ってもおかしくないし、どんな時代に生きていようが、誰であろうがかまわずに
起こりうる。
そんな事を改めて教えられたように思います。
舞台には色々なものが詰まっています。
次回が楽しみです。
乗山徹
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