現代版「人を大事にする経営」

2017/02/16

昨年、エクスマ札幌塾の受講生リストに㈱和光の田中伸一良氏の名前を見つけた時、「あ、田中傳右衛門さんの息子さんだ」と気付き、どんな方だろうかとお会いするのが楽しみでした。

㈱和光は札幌駅地下にもショップがある着物卸小売業の会社で、田中傳右衛門さんと言えば、北海道中小企業家同友会では有名な方で、僕も１０年以上前に釧路で行われた全道研で同じ分科会の幹事でご一緒したり、釧路での講演を聞きにいったり、さらにその後の全道研でも何度もいつもの着物姿をお見掛けしたりで、僕の中でもまさに「ミスター同友会」的な方でした。

以前お聞きした傳右衛門さんの講演の細かな内容は忘れましたが「人を大事にする経営」そのもので社員教育に大変熱心に取り組まれている会社という印象を強く持ちました。

昨年のエクスマ塾ではサポートスタッフとしてロウこと田中伸一良さんの会社のお話を聞き、あの傳右衛門さんから引き継いだ会社がその後、どんな経営をしているのか、とても興味を持ちました。
釧路市地域雇用創造協議会から道内で誰か講師いないかという事になり、今回お呼びした次第。

で、昨日の講演ですが、素晴らしいものでした。そして凄く勉強になった。感動した。
２０１１年に伸一良氏が代表取締役に就任し、それから５年余り、大変な事業環境の中、駆け抜けてきた。

この着物業界は僕が田中傳右衛門さんの話を聞いた１０年前とは全く様変わりしていて、業界全体の事業規模が１０分の１以下にまで縮小してしまった。
その中で、これまでの卸売り中心のビジネスモデルが成り立たなくなり、組織も次第に硬直していったのだと思います。

田中伸一良氏が引き継いだ時点で、資金繰りが悪化する経営危機。
社員のモチベーションも悪く、ビジネスモデルを大きく変えないと生き残っていけない状態に。

その後のわき目もふらず改革に取り組んだことを今回の講演で余すところなく話してくれました。
まず社内のコミュニケーション改革。
今回、講演してくれた改革のキーマンとなった谷本マネージャー、足を引っ張る古参社員と全身全霊で闘い組織を変える原動力となった。
腹いっぱい元気の出る朝礼、仕事の一環として極めて重要なテーマ毎の社内委員会。
そして全社員でコミュニケーションを理論的にも理解するための学習。

そして高い着物を硬直的に売る着物小売りではなく、顧客視点に立った若い世代にも着易いものを提供する小売のイノベーション。

販売員の林さんのお話も感動的で、「コミュニケーションが良い組織はモチベーションも高くなる」という言葉が心に残りました。

超衰退業界の中で、こんな力強い組織をつくって進化し続けている㈱和光さんを尊敬します。
伸一良社長、そして谷本、林、両女史の溌剌たる話しぶりに、この大変化の時代を超えて「現代版人を大事にする経営」のＤＮＡが継続しているのを見ました。