アイデアの核は平等である
以前勤めていた情報処理会社の営業マン時代に会社の浮沈を握るような大型商談がありました。営業の責任者だった僕は、これまでにない取り組みをやってみた。
それは会社の全員を商談に巻き込むこと。営業部署だけでなく、システム開発、保守サービス部門、事務の連中まで部門長を中心に巻き込む。
部門長に分担して提案書を書いてもらう。
さらに提案後のプレゼンやデモでも全社員を巻き込んで良いアイデアがあったらどんどん出してやってもらう。
何故こんなことをしたかというと、皆この商談に社運がかかっていることが分かっていてとてもその行方を気にしていたからです。
だったら、巻き込んで一緒にやった方が一体感が出るし、商談にもプラスになるのではないか。
更に一人の脳みそで考えるより、皆の脳みそを集めた方がパワーも厚みも出てくるだろうと思ったのです。
だから章ごとに色々な人間に書かせ、表紙の絵も得意な若手社員に書いてもらいました。
僕の予想通りこの全員での取り組みが功を奏し、この大きなコンペを取り、これを境に会社は成長路線に入っていきました。
その後もこのスタイルで突き進み、コンペでの勝率は8割位の結果を残すことができた。
この社内の皆の脳みそとアイデアを拝借するやり方で、コンペが始まる前から「勝った」と思った商談がありました。
ある自治体でのシステムのコンペで、他社はシステムブース毎にメーカーが作った小さな看板を出していたのですが、内の会社はブース事にオリジナルの楽しいノボリを立てていた。
見た目で既に他者を圧倒していたのです。
これもシステム開発の若手SEのアイデアでした。
当時、言葉に出していたわけではないのですが、良いアイデアは誰が出したに拘わらず、否定しないで積極的に採用しようという暗黙ルールが社内で共有されていたのです。
この商談も見事に取ることが出来ました。
コンサルの現場でも様々な会社でこの情報の共有のあり方が時に会社を良き方向に導き、時に会社の停滞の元凶であったりします。
「ウチの連中は全然アイデアを出さない!」と嘆いている社長さんに云われて会議に出てみると、社長の演説会が延々と続き、せっかく社員が意見を出しても最後は社長が自身のアイデアを押し付けて終わってしまったことがありました。
これをやっている限り、社員は誰も発言しなくなり、モノを考えなくなります。だってバカ臭いでしょ、結局全部否定されるのがわかっているんだから。
この状態を脱するためにやること。それは、アイデアを「平等」に扱うことです。
良いアイデアはつぶさずに引き上げて採用する。
前出の社長がやっているのは、自分のアイデア以外は認めない、アイデアを人によって「差別」しているわけです。
こんなことをやっていては組織活性化も会社の成長もあり得ない話です。
実際にこのアイデアの平等化をやってみると分かるのは、アイデア自体は誰でも持っているし、役職や年齢、人事の評価、性別、それらと殆ど相関関係がない。「あの人がそんな良いアイデアを持っていたのか」ってことが実に多いということです。
逆に言うと、前出のような上位者の鍋奉行化が常態化している会社では、それらの極めて有用なアイデアを全て封殺しているわけです。
アイデアの核は常に平等である。本来、平等なものを差別するからおかしくなる。
各人の頭の中に眠るアイデア、そのパンドラの箱を開けて思い切り生きたルネッサンス的組織にするか、封印して停滞したままの組織でいるか、あなたはどちらを取りますか?
乗山徹
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