ボーっと生きてんじゃねーよ!
先日、中小企業家同友会のマルチメディア研究会の例会で自分が講師役となりAIに関する勉強会を開催しました。
最近の新聞を読んでいてもAIに関する記事はとても多いけれど、AIにどんな特質があって、どんな業務に使うことができて、それがどんな働きをするのか、実のところ良く分かっていないというのが僕自身の正直なところでした。
恐らくAI研究やAI導入の最前線にいる一部の人たちを除いて、特に中小企業者のほとんどは、AIの話を聞いただけである種の疎外感、置いて行かれた感、そして恐怖感のようなものを感じているではないでしょうか。
恐怖感というのは、シンギュラリティ(技術的特異点)といって、AIが自律的に全く人間の力を借りずに、自分自身よりも能力の高いAIを作り出すことができようになる、それが2045年位だという説を唱える人も出てきて、そんな話を聞くと無力感にさいなまれてしまう人も多い。
さらに10~20年後にAI等のイノベーションにより今の仕事の半分がなくなるだろうということも言われている。こんな話も、もうオジサン達はボー然とするしかありません。
それにしても、AIを巡る話は玉石混交のような状態で何が本当で何がデマなのか、相当乱暴に語られているようにも思えます。
今回、そもそも今AIと言われている技術は基本的にどんな構造で何ができて、何が出来ないか?それが資料をまとめる中で結構整理され、自分の中であるイメージを持つことができたので、とても有意義な作業でした。
まずAIの限界から言うと、コンピューターは基本的に四則演算の計算しかできないので、四則演算に置き換えられることしか処理できない。そもそも人間の脳の働き自体が殆ど解明されていないのだから、当面はシンギュラリティなどはムリな話である。
AIは言葉の意味も分かっていないし、応用が利かない、柔軟性がない、決められたフレームの中でしか計算処理できない。
そういう意味では人工知能というには相当おこがましいレベルなのです。
今でもiPhoneのsiriやamazonのアレクサなど、正直出来ることは相当限られていてがっかりしている人も多いと思いますが、それは人間の脳に似た構造で動いているわけでは全くなく、人間に見えるように人の手で作り込んでいるに過ぎないからです。
ところが、そんな限界が色々あるAIですが、あらかじめ設計された枠組み(フレーム)の中で人間が与えた正解に基づいて分類や検索し、人間が設計した基準に沿って膨大な数の試行錯誤をシミュレーションなど行い、強化学習を経て最適化した結果を出すといったやり方で、これまで出来なかった驚くべき仕事の数々をこなすことが出来るようになりました。
これはディープラーニング(深層学習)という技術が登場し、過去の大量のデータを検索、検討し最適化して答えを出すといったことが出来るようになって実現したことです。
これができる前提として過去データが膨大に低コストで使えるインターネットの普及があったのです。
AIではコンピューター将棋やコンピューター囲碁など、目的や目標と制約条件がはっきり記述できる課題では強化学習による最適化がうまくいくため、そこに限って言うと正に人間には出来ないことをやってのける。
ローンの与信管理やコールセンターでの補助業務、放射性画像診断等、フレームがはっきり定義できるAIで代替できる業務はどんな業種にもどんな会社にも存在するのです。
10~20年で今ある仕事の半分がなくなるというのは本当かもしれません。
定型的な業務は移行される可能性が高い。
中小企業にはAIなど敷居が高くて導入できない?
恐らく、AIのシステムもAIの導入ノウハウも急速に汎用化されるのだと思います。
恐らくこの作業を進めない企業はコスト高で生き残ることができない。
それでは人間に残された仕事は何でしょうか?
AIが得意な与えられたフレームの中での定型的な仕事ではないこと。
それは新しいものを生み出す、考える、アイデアを出す。
新しい価値を創造する。
AIに出来なくて人間に出来ることはそこだと思います。
それにしてもこれから会社は定型作業追い出し業務を競ってやることになるのではないでしょうか。
全ての働き手にとっては働き方改革どころの話ではなくなってくるように思います。
ボーッと生きてんじゃねぇーよ!の世の中になりそうです。
今回の作業で感じたことを書いてみました。
乗山徹
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