売上アップアドバイザー シーサー君

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麦飯腹いっぱい喰える、俺ありがてぇ!

   

来週末に開催の読書会は今回で100回目。課題図書は夏目漱石の「明暗」です。
「明暗」は漱石の絶筆となった作品で、文庫本でも650ページを超える大作で連休の前半で何とか読み終えました。
ところが課題図書はこれで終わらず、水村美苗さんという方が漱石が書けなかった「明暗」の続きを自分なりの解釈で構成して書いた「続明暗」というこれまた長編が待っており、連休の残された時間をこの読書に割り当てる予定です。(ややとほほな感じ)

漱石の「明暗」を読んで分かったのですが、実に良いところで終わっている。もっと先が読みたいとここまで読んだ人は誰もが思うところで筆を終えているのです。
だから、連休の後半を取られたとしても、とほほな反面楽しみでもあります。

「明暗」自体は当時の知識人、上流階級の夫婦、親戚、男女それぞれ登場人物が織りなすドラマの心理描写が細かく描かれた小説で、前半は結構淡々と進むのですが、最後の方で急に派手な展開でスピードが増し先がどんどん読みたい!と思わせるところで絶筆、終わり、という未完の作品です。

この作品の感想は後日に譲るとして、今日はこの作品を読んでいて気付いた全く別の観点のお話を書こうと思います。

このような文学作品を読む場合に、自分が生きた時代に書かれた本であれば時代の空気や背景は理解できるし、すっと入ってくる。
しかし、「明暗」が書かれたのは1916年(大正5年)から漱石が死んだ1917年。
中々想像しようにも自分が生まれるより前の時代はイメージできないのが普通です。

ところが偶然にも最近、この明治から大正に変わる頃のテレビ番組をたて続けに見ることになった。「おしん」と「いだてん」です。
そこで急に、この「明暗」の書かれた時代はどんな時代なんだろうかと強い興味が湧いてきました。
ちなみに丁度今放映されている時代と当時の歴史年表を並べてみると

明治37年 1904年 日露戦争
明治38年 1905年 日露戦争
明治40年 1907年 「おしん」
明治41年 1908年 「おしん」
大正1 1912年 「いだてん」(ストックホルム五輪)
大正3 1914年 第一次世界大戦
大正4 1915年 第一次世界大戦
大正5 1916年 「明暗」 第一次世界大戦
大正6 1917年 「明暗」 第一次世界大戦

今から100年ちょっと前ですから今ほど時代の流れは速くないでしょうから上記の出来事はほぼ同時代とみても良いのではないかと思います。

同時代に生きた人として彼らを並べてみて気付くのは、圧倒的な貧富の差です。
漱石の明暗に出てくる当時の知識人・上流家庭の登場人物は総じて裕福です。家のお金が無くなれば親に無心をして出してもらう。サラリーマン家庭の家長でありながらそれを何とも恥とも思わないし、下級家庭の出の者を軽蔑しながら、平気でお金をその人物に渡したりする。やはり裕福なのです。それだけバック(代々の家の財産の蓄積)があったということなのでしょう。

「いだてん」も田んぼを売ったり、材木屋に婿入りしたりしてオリンピックに専念できたのですから、当時としてはかなり裕福な方だったのだと思いますね。

一方、「おしん」はどうでしょうか?
東北の寒村の小作人一家の生活は壮絶の一語に尽きる。口減らしのために生まれた子供は養子に出したり奉公に出す。老婆はそれを苦に川に身を投げようとする。母親は寒い川に入り身ごもった赤子を流産しようとする。家長の父は地獄から抜け出すため一家でブラジル移住を画策した。母は家を出て温泉場の酌婦をして生活を支える。そしておしんは奉公に出る。
残ったものの米も節約するために大根メシしか喰ったことがないとおしんは言う。もちろん学校には行っていない。
後日、おしんは当時の農村の小作人は皆同じようなものだったと回顧しています。

当時の日本は農業社会だったから、やはり「おしん」のような家は多かったのだと思うし、北海道に渡った我々の先祖達も貧しさから抜け出すためにこんな寒い土地にわざわざ渡ってきた人が多いのだと思います。

「おしん」と「明暗」を並べてみると、当時の世の中がどう成り立っていたかが垣間見えるように思う。食えない大多数の「おしん」たちの米が巡り巡って「明暗」の富裕な人たちの家庭の富となる。
そんな社会の構図だったのだと思う。

100年ちょっと経って、元号が平成から令和に代わったばかりの今、常時大根飯を食わなければならない人は今の日本に殆どいない。
でもたった100年前にはそういう社会だった。

100年かかって築いた今の世の中の仕組み。
一杯足らないことも多い。
でも築くのに100年かかったものが壊れる時はもろい。

そう言えば今日は憲法記念日だ。
生存権と基本的人権が憲法で保障されている今の日本。
その貴重さ、有難味を忘れたらダメ、当たり前だなんて思わないことだ。
現に100年前には皆大根メシしか食えなかったんだから。

大根飯じゃなく、麦飯腹いっぱい喰える、ありがてぇ!
おしんの言葉を噛みしめながら。

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北海道釧路市の中小企業診断士&ITコーディネーター。エクスマ手法でお客さん企業の売上アップを日々指導。沖縄好きで三線唄者「シーサー君」としてピン芸人もやっています。「シーサー君ブログ」で手書き絵ブログを一日一絵一文を更新中!

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