〇▲ペイ狂騒曲の裏側で
先日、キャッシュレスに関するセミナーでお話をしました。
〇▲ペイが次々と登場し、店としても顧客としてもそれぞれの違いは何なのか?そもそも対応した方が良いのか?ポイント還元はどうすれば良いのか?等々、良く分からないことだらけという声が多く今回のセミナーを企画しました。
セミナー準備をしていて、このペイ狂騒曲とも言えるコード決済乱立の裏側で起きている大きな流れについて気付いたことがありました。
今日本で雨後のタケノコのように増えているQRコード決済は中国が圧倒的に先進国です。決済時にスマホとQRコードさえあればどこでも導入できるというシンプルさもあり、中国で爆発的に普及し、結果的にアリペイとウィーチャットペイの2社で市場の9割を独占して今に至っています。
元々あったQRコードをこんな風に使うなんて、瓢箪から駒のような話でこれはこれで大発明だと思うのですが、中国でコード決済が爆発的に普及した大きな理由はこれだけではありません、というか社会革命というか経済革命というか、QRコードが革命的に変えたのは個人や企業の「信用」の部分なのです。
今回資料を作っていて、この中国の「信用」に関して、僕自身そう言えば・・・と思いだしたことがありました。
遡ること8年前、2011年の秋に中国の東北部にある瀋陽市にクライアントの代理で商談会に行きました。その時、主催者の地銀の手配で色々な所を見て回ったのですが、その中の一つに日本から支店を出していた消費者金融のアイフルの店舗がありました。
なぜ中国の一都市にサラ金が?と思ったのですが、日本でいうサラ金業務というより普通の金融機関として機能しているという説明でした。
そもそも(2011年時点での)中国では、日本のような個人や中小企業向けの金融インフラが存在しない。会社を創業する人は親戚一族郎党から金を借りて創業するしかなかった。それらの個人や中小企業向けに小口の融資を提供する機能を担っているようで、伺った時もお店は大盛況でした。無担保でも事故率は極めて小さいとのこと。
という状態の社会に不足していた民間向けの金融インフラとして登場したのがQRコード決済のアリペイやウィーチャットペイだったのです。
仕組みは以下の通り。
・中国のQRコード決済では手数料を無料にし、これだけ爆発的に普及した。それではどうやって儲かっているのか?それは、決済以外の収益源があるから。
・中国のQRコード決済は、基本的にデビット機能。まず口座に現金を預け、そこに入っている分だけ買い物をすることができる。その際に、お金を預けてから決済するまで未決済の残高が「プール」される。
・アリババはそのプールに目をつけ、それを投資信託(MMF)に投資させることで、消費者は銀行金利より高い金利を得ることができる仕組みを築いた。
・これにより、アリペイは銀行と運用会社の両方の機能を有するようになり、投資信託(余額宝)は世界最大のMMFファンドとなった。
・QRコードで決済することで、決済履歴が残る。その人が何を買って、どんな生活をしているのかが一目瞭然。大量の決済データが積み重なることでビッグデータが出来上がり、その人の信用力が「スコア」となって表れる。
・借り手がスコアを持っていれば、ビッグデータにより貸し倒れ確率を算出することができ、リスクに応じた適正な金利でお金を貸すことができるようになった。スコアの高い人なら、低金利でお金を借りることができる。
・個人情報をアリペイにさらすことで、適正な信用を得られることが可能になった。これを芝麻信用(じーましんよう)と呼ばれる個人信用評価システムである。
これらの機能により、中国社会ではそれまで存在しなかった個人や中小企業の「信用」の仕組みが一気に普及し、QRコード決済の会社が産業と社会のインフラとなった。金融機関を代替する巨大なフィンテックとしてアリペイとウィーチャットペイが民間金融における信用供与の担い手となったというわけです。
翻って日本はどうでしょうか?
今乱立している〇▲ペイの中で中国の2社をモデルとして市場を独占するフィンテックとなる会社があるでしょうか。
元々確立している日本の金融インフラの中に割って入るのか、或いはとって変わるのか?
僕には分かりません。
でも、背景は頭に入れながら金融機関ともお付き合いした方が良いでしょう。
さらに数日前のニュースに飛び込んできたのがフェイスブックの仮想通貨「リブラ」です。金融業界にとってはまさに黒船、「信用」革命の決定打になるのかもしれません。
具体的に何がどうなるかは全く分かりません。
ただ、お金にまつわる大地殻変動のただ中に我々が居るのは間違いなさそうです。
以上、今回セミナー準備をしていて気付いたことをまとめてみました。
長文お付き合いありがとうございます。
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乗山徹
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