巣篭りを奇貨として
あれよあれよという間にコロナ騒動が拡がり、総理大臣が国民に巣篭りをお願いするという緊急事態になってしまいました。こんなことは日本の歴史上でも初めてじゃないかと思います。
国を挙げて対策を施している以上、このコロナ禍はやがて反転、収束に向かうのは間違いないのですが、その時期がまだ見通せない点がやっかいでもありますし、コロナ禍が収まった後の消費者の巣篭り癖をいかに早く解消させるかも、国策として巣篭りを奨励したからには、これもまた国策としてこの巣篭り癖解消策を講じて欲しいところでもあります。
こんな時だからと言うわけではありませんが、やっている人は毎年やっているこの時期の取り組みについて書きたいと思います。
最近、仕事柄とみに聞かれるのが「補助金ってどうなの?」
「どうなの?」ってどういう意味?って感じですが、補助金に興味がある経営者は多い。
国が中小企業対策で予算化しているお金には大きく分けて①補助金②融資(利子補填)③税制(減税)の3つがありますが、①補助金は投資額の1/2又は2/3を真水でお金を出してくれるため中小企業者には昔から人気が高いのです。
経済産業省(中小企業庁)が講じる補助金は例年3月~6月が申請期間のものが多いのでまさにこれからがシーズン、省庁サイトに公募情報が順次出てくる時期なのです。
補助金はお金がもらえるのでシアワセ感溢れるイメージですがリスクも潜んでいることも必ず理解すべきで、これをもらったが故に経営に失敗し倒産に至るという結果もこれまで生んできた歴史を是非知っておいてもらいたい。
どういうことかというと補助金は基本的に国が力を入れる中小企業施策テーマに対してつけるものです。ものづくりを奨励するためにイノベーションを産む機械設備投資への補助であったり、新しい取り組みのためのマーケティング施策への補助であったり。
例えば、新しい事業分野への取り組みのために6000万円の新規工場を建てたケースで考えてみましょう。補助金は2/3の4000万円が支給されますが、残り1/3の2000万円は自己資金で工面する必要があります。2000万円の自己資金をポンと余裕で出せる中小企業者はほぼ居ない。多くの会社はその2000万円を銀行からの融資で賄う。
この新しい事業で2000万円の自前投資を回収し上回るだけのキャッシュフローを上げることができるかどうか?結果的に全くこの新規事業から産まれる商品が顧客に受け入れられず当たらないこともある。そうなると銀行から借りた2000万円は返せなくなり中小企業の体力では資金繰りが持たない。そんな構図なのです。補助金の全体額が大きくなればなるほど自己資金も膨らみそのリスクは高まる。
その他、補助金で注意することは、申請された案件を審査し採択される方式で必ずもらえるわけではない、年度の実施期間の終了後に補助金が給付される後払い方式である、実施期間の前に支出された費用は支払われない、事業実施後に支出のチェックがある、等です。面倒が嫌いな人だと「こんなんだったらもらわなきゃ良かった」なんてことも良く聞く言葉です。
「お金だけ欲しい」という方はやめておいた方が良いし、多分もらえないと思います。
と耳に痛いことばかり言いましたが、会社を変えるために手を打ちたい、そのための投資が必要だ、という向きには補助金が大きな支えになってくれるでしょう。
先日、経済産業局の担当の方のお話を聞く機会があり、次年度の目玉の補助金として以下を挙げていました。
・ものづくり・商業・サービス補助金(上限1千万円、補助率1/2、新製品・サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資を支援)
・持続化補助金(上限50万円、補助率2/3、店舗の改装、ホームページの作成・改良、チラシ・カタログの作成、広告掲載費用等の支援)
・IT導入補助金(30万円~450万円、補助率1/2、バックオフィス業務の効率化や新たな顧客獲得などのためのITツール導入の支援)
・事業承継補助金(上限1200万円、補助率1/2~2/3、事業承継、M&Aを契機として、新しいチャレンジを行う事業者に対してその取り組みに係る経費を補助)
これ以外にも中小企業施策で予算化されて使いでのあるものは膨大にあるのですが、毎年6月位に出る、「中小企業施策利用ガイドブック」をダウンロードするか取り寄せて(無料、送料自己負担)手元に置いておくと良いです。
ここまでは経済産業省の講じる補助金ですが、実は国の補助金にはもう一つ大きな分野があります。それは厚生労働省が講じる雇用関係の助成金です。
そちらの冊子は「雇用・労働分野の助成金のご案内」でこちらもダウンロードするか、ハローワークの助成金窓口に行けばもらうことができます。
厚労省の助成金の方は国の重点施策を反映した人件費補助の意味合いが強く、条件に該当した場合には必ずもらえる性質のお金で、雇用調整助成金などは正に今コロナウィルス対策として講じられているものです。
と色々と述べてきましたが、補助金をうまく活用して使いこなせる会社になって欲しいと思います。
補助金を悪者みたいに言う人も居ますが、前向きに捉えればこんなに有難い制度はありません。ただ上述したように自己資金がセットの投資ですから、リターンが求められる。その投資の結果はあくまでも自己責任なので良いも悪いも全部自分に返ってくるということだけは覚悟が必要。
調度今世の中はコロナウィルス対策で巣篭りモードを与儀なくされている感じですが、これを奇貨と捉えて、まずは補助金のことを知るきっかけにしてみてはいかがでしょうか?
この騒ぎの収まる日は確実に来るし、その時にこれからどうしようかじゃなくて、巣篭り期間に少しでも次の対策を仕込んでおく事が中小企業者が今やるべきことのように思います。
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乗山徹
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